料理通信がすごい

っていうのは、志がめちゃ高いこの雑誌を毎号読んでいらっしゃる方には、もう当たり前のことかも知れません。
妻の岡本翔子は創刊時から連載をさせていただいています。僕も一度編集部に遊びに寄らせていただいた事があり、そのときは日本酒のゼリーをお土産でいただいたものです。

それぞれのジャンルにおいて、ハードで、いい意味でマニアックで、とにかく気合いの入った雑誌ってありましたよね。音楽だったらうーんうーん「ミュージック・マガジン」とか「ロッキンオン」とか ?? (たとえとして違うか)、文学とかだったら「ユリイカ」「現代思想」??? うーん最近そういう雑誌手に取らないから、名前出てこないなあ、まあとにかく、料理に関するテキストでは料理通信、僕は一番わくわくするものですよ。ていうか全ジャンルの雑誌の中で最高にすごいかも、なんて。マニアックでも大局を見失なっていないのです。ときどき凄すぎて落ち込むくらいです。でも同時に励まされて立ち直ります。

編集長の君島佐和子さんのこだわり、料理や食材に対する考え方・哲学、それが生み出す求心力が凄いと伝え聞いております。そしてメンバー全員のハード・ワーク、ソウル・ワーク。だから料理界で真摯に活躍する有名シェフたちからも、料理通信は一目置かれているし、愛されているのですね。

その料理通信社がプロデュースする企画「全国お宝食材コンテスト」、そこに取材した BS フジの番組「Table of Dreams 食材がつなぐ 人がつなぐ食卓」を観る。

「この食材すごいよねっていうものをつくる人たちって、あのう、ちょっと一種、常軌を逸している方もいたりするんですよね、やっぱりもう思い入れが強い。それが非常にそのう、面白い。で、その生き方も面白いし考え方も面白いし、で、その結果こういうものが生まれてるんだなって。そういう方々の姿を伝えることで、あ、おいしいまずいとかで済ませちゃいけないものなんだな、済ませられるものじゃないんだっていう事を、一人でも多くの方に感じていただけるとすごく嬉しいなと思います。」
番組冒頭近くの君島編集長の言葉である。

取材されていたのは山梨の桃農家の堀井さん。桃のシロップ漬けがお宝食材に選ばれたのだ。採れたてのような食感と自然な甘さ。
農園の桃の木、全部が幾何学的、亜主枝の出し方のストラクチャーが仕立て方の醍醐味、3D構造。元IT業界から桃農家へ。
「(代々の農家は)必ず先代のやった事を乗り超えていかなければいけない。」堀井さんが師匠と仰ぐ農家の方の言葉です。この方の桃には一本の木に千粒の桃がなるのだといいます。

ああ、それにしてもおいしそうです。

番組最後の君島さんの言葉を再録して筆を置きます。
「自然があって気候があって、その上にしか成り立たないのが食の仕事で、食を生業(なりわい)にしている人間には驕り(おごり)はないと思う。エゴが通用しないのがこの食の仕事だから。それをずっと見続けられるこの食の雑誌っていう仕事が、わたしは本当になにより幸せ」
「未来をつくるのはわたしは土だと思ってます。土に携わってる人間が最後は一番強いっていう風に信じています。」