Country for Old Men

Hey Man〜
このあいだ、U珈琲店にて。
二人で散歩の途中でお茶飲んで本読みなど。
そしたら over70 であろう紳士が二人、店に入って来た。一人は脚が悪いみたい。一人はおそらく全盲で、グラサンして白い杖。
この店はよくあるカフェのシステムで、まず入り口近くのレジで注文してお勘定。彼らはそのことを知ってか知らずか、速攻で席取り。そして席に着いたまま、脚の悪い老人が大声で注文を始める。すると店員のお兄さんが「申し訳ありませんが、まずこちらのレジでご注文していただきお勘定をお願い致します」。紳士はそんなことには構わず注文を繰り返す。それに対して、やさしく諭すようにもう一度お願いするお兄さん。紳士、ようやく立ち上がり、飲み物はなんとかレジで注文する。
会話。「ここは〜社の人に連れてきてもらったんだよ。Wさんの紹介でね。」盲目の老人「ほう、そうですか」「それでね、Wさん、ほらなんだ、癌でね、膵臓! もうね、だめみたい」「ほう、膵臓」かなりわびしい話題を元気よく繰り広げるのだ。
「なんだか小腹がすいたな。サンドイッチでも食べようか。〜さん何がいい? ああ、お兄さん、サンドイッチかトーストかなにか、持ってきて!」席からの強引な注文である。さきほどのように「あの、こちらでメニューを見ていただいてからでないと、いろいろ種類もありますので、、、」とお兄さん。
その答えが聞こえていないのか何なのか、脚の悪い老人が盲目の老人に大声で告げる。「大丈夫。この店はここから言えば持ってきてくれるから。それにそこの脇のところから店の人に注文できるから、〜さん、好きなの注文しておいでよ」そのようにそそのかす。
盲目の老人は杖をつきながら立ち上がり、食器返却口に突進していく。「すみません、すみません。サンドイッチ」とかなんとか。レジからお兄さんがやってくる。彼は落ち着いている。自然な笑顔。
メニューを持ってきて、立ったまま盲目の老人にサンドイッチには種類があることを説明している。そして盲目の老人を一度席まで誘導して座らせ、脚の悪い老人にメニューを見せる。「食べ物もいろいろ種類がございます。こちらを見ていただきお客様に決めていただかないと、われわれとしてもご注文をお受けするわけにはいかないのです」・・・おお、なんという根気だろう、なんというやさしさだろう。こうして老人たちはまんまと席についたまま注文を完了。運ばれてきたサンドイッチにパクついている。
「この店は来たことがあるからね、よく知ってるんだ」
いい店だ。大変だ。いい店だ。
わたしの脳裏に "Country for Old Men" という新しい曲がささやかに流れだした。
あるじゃないか、場所も国も。あるじゃないか、今も。あるじゃないか。
いい店だ。大変だ。やさしいじゃないか、今も。頼むよ。えらいよ。頼むよ。
その聴いたことのない調べは帰り道でとても大きな音になっていって、通り沿いの八百屋でりんご(サンふじ)を選んでいるときに、最高潮に達したという。
Hey Man〜