存在せぬものは創造せよ --- それは目的

このあいだ山中湖で踊ったのがなんだかとっても良かったこと、それについて。
ダンスについて、イブラヒムおじさんはこう言っている。
「そう、踊るのさ。何がなんでもね。『人の心は、身体という名の籠に閉じ込められた小鳥のようなもの』。そして人が踊るとき、心は鳥のように歌うのさ。・・・」
(『モモの物語』より。エリック・エマニュエル・シュミット 作 番由美子 訳 )
短時間でも効果てきめん。私としたことが、ダンスを忘れていたなんて!


山中湖に行く前の時期、映画『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』をたまたま観る。たぶん二回目だと思うんだけど、今回、すごく新鮮に観れたのだ。
観なおしてドヒャーっと感銘を受けた。選曲、俳優、ストーリー。60年代のパリの再現。トルコ・ロケ。効果的に使われるオルガン・ポップジャズやロックンロール。さっそくサントラと原作本を注文。Bill Haley & His Comets のアルバムも聴きまくった(子どもの頃からテレビなんかで Rock Around The Clock がかかると、なぜだか照れくさくなってしまって、まともに聴いて来なかったのだ)。リスニングの下地が出来ていたのだろうか。持っていても夢中になることのなかった50年代のロックンロールを、本気で良いと思うようになった。主人公のモモが劇中で聴くのを見たからってだけでもなく、「ああ、そうだったのか、そんな風に受容=需要されてたのね」と、ぜんぜん古臭さを感じずに、素直に普通に聴けるようになった。というか、未来の沃野にすら鳴り響くのを幻視したというべきか。喜ばしい。重要な使われ方をしている Timmy Thomas 、これは1972年。この盤も持っていたけどあまり聴いていなかった。映画の大半の時間の時代設定から言えば、未来のヒット曲だ。


東京に戻ったら原作本が届いていた。コーヒーを一杯飲む間に読めてしまう、楽しい読書だった。その中に、踊りについて自分の状態を表してくれている言葉をいくつか見つけたので。


表題の「存在せぬものは創造せよ。それは目的」はやはり原作本からの引用。イスラム神秘思想、スーフィズムの重要人物、ルーミーの言葉だそうです。この言葉の前の部分に他の箴言がいくつかあって、その流れからこの言葉の意味は、「人生の善き目的を創造せよ=自然や無限との合一を目的とせよ、野心や激情は死滅させよ、人は心なり」という文脈なのですが、音楽でも絵画でも料理でも、オリジナリティーのある良いものを創ろう、それを人生の目的としよう、とも感じました。ただし善きこと・良きことを、と。
ルーミーは、旋回舞踏で有名なメヴレヴィー教団の始祖とされる人物。トルコではそのものずばりメヴラーナとも呼ばれています。13世紀に活動し、その後多くの人たちの精神的支柱・導師であり続けているルーミー。井筒俊彦訳の『ルーミー語録』は分厚い本ですが、二度目のトルコに50ページ分ほどコピーして携帯したのを今思い出した。
コンヤのメヴラーナ博物館(メヴレヴィー教団の敷地・建物が博物館になっていてルーミーの霊廟もある、今もたくさんの人々が巡礼するように訪れる場所)の炎天下の中庭で薔薇の花に囲まれ、シャッフルでかかったJulian Cope『Sun Spot』は忘れられない。スーフィーの旋回舞踏も観ることが出来た。その日記、今は疲れているので、リンクは明日ハル。